怖い小説を読みたいと思って辿り着いた
井上夢人さんのラバーソウル。狂気のストーカーの小説らしい。
今までに読んだストーカーの小説で、とにかく怖かったのが「RIKA」。
こちらは単なるストーカーを超えた怪物っぷりに背筋が凍りましたが、ラバーソウルはどうだったか?
600ページ近くある長~い小説を読み終えた感想です。
井上夢人著「ラバーソウル」(amazonの内容紹介)
幼い頃から友だちがいたことはなかった。
両親からも顔をそむけられていた。
36年間女性にも無縁だった。
何度も自殺を試みた―
そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。
その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。
心が震える、衝撃のサスペンス。
ラバーソウルの感想
醜い容姿のコンプレックスから、人前に姿を見せることに恐怖を怯え、自宅に引きこもった生活を送る鈴木誠。
実家は資産家だが両親からは愛されず、唯一心を許しているのが何十年も鈴木家に仕える金山。
その金山が手足となって、鈴木誠の世話をしている、というのが背景。
ある日、鈴木誠が記事を書いている雑誌の編集者から撮影用に、愛車のコルベットを貸してほしいと頼まれ、その撮影中にモデルとカメラマンが死亡する事故が起きる。
騒然とする現場の中、モデルの美縞絵里を送って行くように頼まれ、自分の愛車に乗ってくれた美縞絵里への愛を膨らませ、ストーカー行為に発展していく。
うまい事書けませんが、こんな始まりです(^-^;
倒叙系小説のラバーソウルですが、少し変わっていると思ったのが、鈴木誠への警察の取り調べや、被害者、その関係者への事情聴取の形で物語の多くを進めていくことでした。
この後、多少ネタバレするので、ラバーソウルを読もうと思う方は見ない方がいいです。
美縞絵里を見守ることに生きがいを感じ、以降はどんどんエスカレート。
彼女を守るためと、彼女に近付く男を排除するために殺人を犯すことになります。
最初の犠牲者は、撮影中の事故で犠牲になった、美縞絵里の親友であるモデルのモニカの恋人で、モニカと同棲していた遠藤裕太。
遠藤裕太を殺害した後、モニカの携帯電話を持ち出し、証拠が残らないように部屋に火をつけ逃走。
その後、モニカの携帯電話から美縞絵里への無言電話、美縞絵里が住むマンションの前に部屋を借りて盗撮、ゲームの懸賞を偽装して送ったプレゼントには盗聴器。
さらにモデル事務所の男性スタッフを殺害し、エスカレートするストーカーぶりに精神的にどんどん弱っていく美縞絵里。
最終的に留守中の美縞絵里の部屋に忍び込み、自宅に戻った美縞絵里を待ち受けるストーカー。
狂気のストーカーから逃げようとする美縞絵里の体当たり(?)のはずみで持っていた包丁が胸に刺さり、自身でマンションから飛び降り死亡・・・
ここを読んだ時点で「ありゃ?」。
警察の取り調べを受ける鈴木誠のやり取りは何だったんだ?
ラバーソウルの残りページわずか・・・
そこには、前提を全てひっくり返す結末がありました。
(全ネタバレをしないところが我ながら・・・)
同じストーカーの話で、『恐怖』だったRIKAとは違い、ラバーソウルは『生理的に気持ち悪い』の感じなので、自分が読みたかった怖さはなかったけれど、面白い小説でした。
恐怖のRIKAのレビューはこちら(↓)
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